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「オーガニックスタンダードを」 梅本修=有機農家 〜リベル丹後人 marker.2

  • Posted by: 悠家
  • 2010年8月 6日 23:00

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太陽の下で自然に生きられたら、人は笑顔になれるのかもしれません。命の恵みである野菜たちに言葉をかけ、愛情を注ぐ有機農家は、あまりにもまっすぐな笑顔で語りかけてくれました。人と食物をとりまく常識が今、自然の世界の非常識を造り出していること。その笑顔が教えてくれるものは、人も世界の一部だということでした。

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「僕はいつも野菜に話しかけています」
「それが歌だったらいいのに」

初めて出会った日、彼はあまりにもまっすぐな眼差しで私にこう話してくれました。ちょうどその日、弥栄町にある竹野酒造さんにて、私が歌を歌わせていただいた後だったのです。

歌として野菜に語りかけながら、作物を育てる。私はその発想の面白さと、愛情の深さに感動しました。同時に、お日様の下で言葉がメロディに乗り、虫や鳥達の声と混ざり合うイメージが、あまりにも私の中で新しくて、かつ自然なことだなと思ったのです。

農家になるため東京から移り住む

梅本氏は初めから農家だったわけではなく、平成9年に当時勤めていた大手食品メーカーを辞め、東京から私たちの丹後に引っ越し、農業をはじめました。当時は何も分からないままだったから、農協や役場の方に教えてもらい、それをそのまま実行していたとのこと。農薬や化学肥料を使う、現代でいう「普通の」農業です。

東京から移り住み農業を始めたことは、相当な一大決心だったのだろうと私は思いました。ところが梅本氏は「そのことよりも大きな転機になったのは・・・」と切り出したのです。それこそが、彼の人生を大きく変える有機農業との出会いでした。


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有機栽培で育てた彼の大切な野菜。写真は、とてもジューシーで甘い、とれたてのトウモロコシです。普段、缶詰などになったコーンばかり食べ慣れている私にとって、この自然な美味しさは衝撃的とも言えました。

有機農業への大転換

その転機は平成15年。彼は学校給食や病院給食に使われている食材に、たっぷりの農薬で処理された中国産の野菜が採用されていることを知ってしまったのです。次世代を担う子供達の食、体を癒す必要のある人たちの食に、農薬や化学肥料にまみれた食材を提供していいのだろうか?と。しかし、それは同時に、自分の農業を否定してしまうことでもあります。自分のやってきた農業も、農薬と化学肥料に頼ったものだったのですから。

そして彼は、東京から田舎に引っ越すことを遥かに上回る、大転換を迎えたのです。農薬と化学肥料を使わない有機農業へ、と。

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やはり彼のように行動力のある人間でも、多くの失敗を重ねて来たようです。野菜には次々と害虫がついたり、病気になったり、となかなかうまくいかない。

そんな時お出会いしたのが、農学博士である西村先生(京都大学農学部講師・有機農法30年の農学博士)です。梅本氏は西村氏の勉強会に参加し、ついに自分の目指すべき農業の姿を見いだす事ができたのです。


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▲この写真、いわゆる「畑」に見えるでしょうか。この草が生えた一面が、すべて彼の人参畑です。人参は作物の中でも弱く、当初はやむなくビニールなどを被せ保護するそうですが、いったん作物が大きくなればもう雑草に負けることもないのだとか。
この雑草の根が、土をやわらかくフワフワにしてくれるし、根を微生物が食べてまた命がつながっていく・・・と、雑草にもきちんとした役割があるのです。だからこそ、彼の畑はより自然に近い状態に保たれているのです。


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▲ただし彼にとっては、ビニールを使うことも不本意とのこと。現在のところ人参は弱く枯れやすい関係でやむなく石油製品を使っているけど、いつかはそれを使わない方法を見いだしたいそうです。

畑に森をつくる仕事

私は彼の畑を一通り見せていただきました。

彼が畑の上に「わざわざ敷き詰めている」枯れ草。その枯れ草を少しめくって、土の表面を触ってみると・・・ここのところ快晴続きだったというのに、かなりしっとりしている。

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「土1gの中には、何匹くらいの微生物がいると思いますか?」もちろん、私には想像もできない問いだったので答えられずにいると、彼は「10億~100億の微生物が生きていると言われてるんです」と切り出しました。そして、無理に重機で耕したり、農薬を使うことによって微生物が死滅するということも。

彼はこう続けます。野菜は、生きている。それは命だと。その命は、生き物が生き物を食べる、その食物連鎖の中で息づいているものだと。だから、強く健康な野菜ができるまでには、無数の命が関わっている、と。

枯れ草を敷き詰めるのは、水分が飛ばないようにするためだけではありません。草や落ち葉、海藻、海水といった有機物を使うことによって、それを餌にする生き物達がまた活性化する、つまりまた命が循環していくのです。


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一見シュレッダーくずのように見える「海藻」も彼の農業に欠かせない

それはまさに、畑に森をつくる仕事です。森には生命が循環するために必要なシステムが途方もなく長い年月の間、ずっと維持されてきました。その森を畑に再現することで、野菜や作物という命を育てるのに理想的な環境が出来上がるということです。


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彼が利用している技術の一つに「EM農法」があります。EMとは有用微生物群をさす言葉で、乳酸菌などの有用な微生物の働きによって土壌改良を行う、自然の力を借りた手法です。
ただし、この手法が彼の「売り」ではありません。いったん理想的な畑が出来上がったあとは、殆どEMを使う事はないそうです。EMを使うのは、「農薬や化学肥料で荒らされてしまった畑の回復を早めてもらう」ことが主な目的とのこと。微生物たちが死滅した土に、もう一度命を吹き込む、そんなイメージでしょうか。

オーガニックスタンダード=有機農法を標準にする

現在の活動を続けて行く中で、梅本氏には一つのスローガンがありました。

彼自身が掲げた言葉「オーガニックスタンダード」の名の下に、農薬を使わない農業を「標準」にしていくこと。これが彼の夢であり、達成するべき目標です。ところが、これは正直、壮大な目標といっても言い過ぎではありません。

現在、全国の農家のうち、有機農法を取り入れているのは1%。そのうち、彼が多大な努力の末取得した有機JAS(農林水産省が認める正真正銘のオーガニック)認定の農家は0.17%に過ぎません。逆にいうと、99%の農業が農薬等を使用していることになります。

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梅本農場が取得した有機JASのロゴマーク。有機農法のクオリティを保証するもの。

彼は、その壮大な夢を達成するために、自分だけじゃなく仲間を増やすこと、そして若い世代を育てていくことが大切だと語りました。その夢が達成される日が来るのかどうか、誰にも分かりません。しかし、間違いなく努力を続けて行くであろう人を目の前にして、希望を持たずにいられるでしょうか。

梅本氏の最終目的

梅本氏が想う、最終目的は。

・・・地球が誕生して45億年。その後生命が   誕生してからずっと、生き物たちは例外なく「命」を食べて生きてきた。命を食べて、子孫を残す。世界にはその循環が出来上がっている。

なのに、たかだか戦後50年くらいの間に化学物質によってその循環が乱れている。確かに生産は増え、農家は楽になった。けど、その結果「命の循環ではないこと」が起き始めている。

このままだと間違った形で進化するのではないか?だからこそ、オーガニックスタンダードを進めていかないと、きっと大変なことになる・・・。


そんな命の循環を体が、心が感じ始めると、ただ機械的に栽培するのではない、「野菜に話しかける」という感覚が自然に理解できるようになります。それは、言葉を交わすという形だけのものではなく・・・。

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健やかに育つ子供達のように

食物とは空腹を満たすだけのものなのか、それとも素直に「おいしい」という幸福を感じるものなのか。その幸福を広げたい、まっすぐな気持ちが彼を動かしているのではないでしょうか。今回私が畑でいただいた野菜は、どれも新鮮で、太陽のおいしさを感じられるものでした。

私は食品に関して意識をしっかり持っているかというと、残念ながらそうではありません。しかし、大きな夢に向かって懸命に努力する姿に触れると、少しずつでもそういうエッセンスを体に取り込みたいと思うようになります。たくさんの心を注いでもらって初めて健やかに育つ子供達のように、畑には無数の命が息づいている。それをよりよい形でつなげていこうとする人を、私はやはり応援したいと思うのです。


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◆梅本修 Osamu Umemoto = 有機農家

農薬・化学肥料に一切頼らない有機栽培=オーガニックに徹底的にこだわり、愛情を込めて野菜を育てる。

平成9年に当時勤めていた大手食品メーカーを退職。東京から丹後に移り住み、農業を始める。平成15年にはそれまでの農業に疑問を感じ、有機栽培に切り替えるという大転換を迎える。多くの失敗はあったが、それからの自分の信念に対して迷いはなく、現在もその思いと技術は輝きを増している。
ただ野菜を栽培するだけでなく、オーガニックの普及活動や、NPO法人を通じた環境活動にも尽力。「山・川・海が汚れたら農業はできない」という信念のもとに、命のバランスを考えながら、日々野菜に語りかけている。

無農薬・有機栽培 梅本農場ウェブサイト(有機JAS認定)

Comments:4

yukari 2010年8月 7日 15:20

梅本さんに出会われたんですね~。。。

素敵な方です。

私も講演をお聴きし元気がわいてきました~。

悠家 Author Profile Page 2010年8月 8日 01:23

>yukariさん
はい、たぶん、yukariさんが思う部分とたくさん重なるような気がしました。
スタジオきと何か接点が持てそうな・・・
またお話したいと思います。

akira 2010年8月 9日 08:57

梅本ご夫妻はとてもいい人たちです。
野菜作りも人ですから、そのままの野菜ができます。

「自然農法」を安っぽい売りにせずにまじめな野菜作りに
取り組んでおられると思います。
出会うたびに顔も手も農業者の表情に変わってるし…
いい感じに年をとって世界一美味い野菜を作ってもらいたいです。
最近、お目にかかってないけどまたいい顔になってますね。
こういう人の作る野菜にエコ減税を適応させてあげてほしい。

悠家 Author Profile Page 2010年8月10日 12:30

>akiraさん

そうですね。例えばメディアの力を借りれば自然農法は一時的に普及するかもしれませんが、梅本さんは地道に、一歩一歩確実に進めておられるような気がしました。ただの流行りになると根付くものにはならない、これはakiraさんがいつも言われていることですね。

梅本さんのたまねぎ、先日いただいたんですが、優しい甘みとなめらかな口当たりで、最高においしかったです。こういった野菜と、岩西さんたちのような方の料理が組み合わさって、またいいものができていく、そんな丹後はとても魅力的です。

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